家屋やビルの外壁工事を行う際には足場が必要になります。
ごく低い建物の外壁の清掃などであればわざわざ足場を組むことなくその都度梯子や脚立を使って行うこともありますが、高さ2メートル以上の場所で作業を行う際には墜落防止のために足場を組むことが必要とされていますからたとえ平屋建てであっても利用されることが多いでしょうし、2階建て以上の場合はまず必須と考えて良いでしょう。
ビルとなればなおのことです。
足場とはその名前のとおり作業員が足を置くスペースのことです。
くさび式足場ってどんな足場?
そして、一口に足場と言っても実はいくつかの種類に分類されるのですが、KRH株式会社さんに代表されるくさび式足場というのは最も広く利用されているものでしょう。
ビルの外壁工事などの際に見かける足場の多くがこのくさび式に該当します。
この名前の由来は、足場材として利用される部材において、凸状のくさび部分と、その凸状部分を受け入れる凹状の部分があることによります。
凹凸部分を組み合わせることで足場を組み立てていくことができるわけです。
この形状がくさび式足場の名称の元となっているわけですが、特徴もこの凹凸部分に大いに関係しています。
各部材を、建物のある現場で簡単に組み立てて足場を作っていくことができるというのがそれです。
凹凸はぴったりとはまるようにできており、ハンマー1本あれば作業員がその場で組み立てていくことができます。
ネジとかボルトやナットで締めていくといった複雑な作業を必要としません。
それだけ短期間に足場を作ることができ、またさほどの熟練作業員でなくても対応できるのが強みになります。
もちろんこの強みは解体時にも当てはまり、工事が終了すればその後短期間で足場を撤去して撤収できるということになります。
くさび式足場の部材について
さて、では具体的にくさび式足場ではどのような部材が使われているのでしょうか。
普段何気なく工事現場を通りかかっているだけかもしれませんが、よく見るといろいろな部材が利用されていることに気付くはずです。
●支柱
まずは支柱です。
地面から垂直に立っている棒状の部材が支柱になります。
支柱の間隔については厳密な決まりがあるわけではありませんが、基本的には2メートル以内となっているはずです。
あまりに間隔が長いと1本の支柱に足場の重みが集中することになり危険ですが、逆に間隔を短くし過ぎるとそれだけ多くの支柱を立てなければならなくなり、コスト的にもまた工期的にも無駄が多くなってしまいます。
ちなみに、支柱が地面と接する部分には、重みで支柱が地面に食い込んでしまうことのないよう、ベースと呼ばれる四角形の部材が使用されており、重みを点ではなく面で受け止めるようになっています。
●踏板
支柱が立てられれば、その支柱に接続する形でいよいよ足場にとって最も重要となる踏板を設置することができるようになります。
踏板の上を作業員が歩いて作業を行うわけです。
●手摺
ただ、支柱と踏板さえあれば十分かというと決してそうではありません。
高所で作業する際、いくら踏板があっても手摺がないとさすがに危険です。
支柱はあくまで地面から垂直に立てられているだけですから、このままでは支柱と支柱の間を歩く際に全く何の手摺もないことになり、いくら高所での作業に慣れた作業員とはいえ、作業環境としてあり得ません。
そこで、踏板の上約90cm程度のところに、踏板と並行に手摺を設置することになっています。
これで作業員もある程度安心して作業を行うことができますが、高さ90cmの手摺だけでは、万が一踏板から足を踏み外した際に手摺につかまるような余裕もなくそのまま墜落する可能性があります。
それを防ぐためには安全帯を利用するなどの方法もありますが、もう1本、高さ45cm程度のところに手摺を渡すこともあります。
次に工事現場を見る機会があったときにはどのような手摺が設置されているか見ても興味深いかもしれません。
●階段
高層建築においては踏板が複数の階層にわたって設置されることももちろんありますが、階層をまたいで踏板を行き来するにはまさか支柱や手摺を伝って上り下りするようなわけにはいきませんから、当然ながら階段が必要になります。
階段もやはりくさび式足場の重要な部材の一つです。
階段にも手摺が設置され、安全を確保しています。
なお、場合によっては階段の代わりに、あるいは階段と併せる形で梯子が設置されることもありますが、梯子は階段と比べると安全性が段違いですから特に理由のない限りは設置されるケースは少なくなっています。
これくらいの部材でおおよその足場を組み立てることはできますが、細かく言えばこの他にもあります。
●筋交
その中でも外見上最も目立つものの一つが、足場の外側に大きく斜めに組まれた部材でしょう。
これは筋交と呼ばれるもので、足場全体の横揺れを防止する働きがあります。
このような部材がいずれもそれぞれの凹凸部分によって接続されているのがくさび式足場ということになります。