2011年3月の東日本大震災以降、原子力発電所のあり方についてさまざまな意見があることはご存知の通りです。
しかしながら、日本には現在50基以上の原子力発電所があり、アメリカには100基以上、世界全体ではおよそ400基以上が設置されていますし、現在建設中の原子力発電所も数多くあります。
その危険性を世界中の人々が知ることになったアメリカのスリーマイル島の事故や旧ソ連のチェルノブイリの事故など、万が一、事故が発生した場合に甚大な被害があることが分かっていながら世界にはこんなにも多くの原子力発電所があり、今もなお建設され続けているのは一体なぜなのでしょうか。
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生産コストが安い
まず、原子力発電の最大のメリットとしては「生産コストが安い」ということが挙げられます。
エネルギー生産において重要なことは、安定供給と経済効率、環境適合をバランスよく達成することですが、この全ての面において完璧なエネルギー源は現時点では存在しません。
国内でエネルギーを賄うことができない日本としては、さまざまなエネルギー源を活用してバランスの取れた電源構成を作ることが重要です。
現在の日本では火力発電が最も多く次いで水力発電、原子力と続いていますが、火力発電では1キロワット当たりおよそ40円、水力発電で30円近くのコストがかかる中、原子力発電はわずか10円足らずという圧倒的な発電コストの安さとなっています。
また、燃料を一度補充すると数年間はそのまま使い続けることが可能で、交換の必要がないこともメリットと言えるでしょう。
次に、火力発電では発電の副産物として二酸化炭素を大量に排出します。
ご存知の通り、地球温暖化の最大の原因は二酸化炭素で、更に火力発電では窒素酸化物や硫黄酸化物などの有害物質も排出しながらエネルギーを生産していますが、原子力発電はこれらの有害物質を排出しないことが大きな特徴です。
日本は自国で賄えているエネルギー自給率はわずか8パーセント足らず
このように、原子力発電にはメリットが多く、本来であればエネルギー供給源の主流になっていなければならないものです。
特に、日本は世界でも有数のエネルギー消費大国でありながら自国で賄えているエネルギー自給率はわずか8パーセント足らずとそのほとんどを海外に依存しているのが現状です。
島国であるためパイプラインを設置することもできず、物流コストをかけて石油などの原料を購入し発電を行っていますが、原子力発電の燃料であるウランは、わずか1グラムで石油2000リットル分、ドラム缶に換算すると10本分のエネルギーを生み出すパワーを持っています。
このウランを加工して作られた燃料は、一度原子炉に入れるとおよそ4~5年間は継続して運転することが可能なため安定供給が可能で、使い終えた燃料の約97パーセントは資源として再利用することができるのです。
東日本大震災が発生した2011年までは、日本における発電のおよそ30パーセントは原子力発電所が担っていました。
しかし、震災以降は一時期全ての発電所が運転を停止し供給割合はゼロに近くなってしまいましたが、現在では関西地区で2ヵ所、九州で2ヵ所、四国の1ヶ所の計5ヵ所が稼働しており、供給率は3パーセント前後となっています。
原子力発電の最大のデメリットは危険性
震災から10年近くが経過したものの震災前の供給率に戻らないのは、やはりメリットに匹敵するレベルのデメリットが存在する他なりません。
既にご存知の通り、原子力発電の最大のデメリットはその危険性にあります。
単純に発電所だけの問題ではなく放射性物質の放出による周辺エリアへの影響は甚大で、空気汚染はもちろんのこと土壌や海までもが汚染されてしまい、人間を始めとして動物や魚、植物も被曝してしまうことになります。
比較的記憶に新しいチェルノブイリの原発事故では、事故から既に34年が経過しているにも関わらず、現在でも周囲4000平方キロメートル以上に亘って立ち入り禁止となっておりゴーストタウン化しています。
日本においても、被災地の福島では2017年3月に一部地域で避難解除されたものの事故前の生活には程遠く、事故現場でも復旧作業は続けられていますが、大量の汚染水の処分などに手を焼いている状態で簡単に廃炉にすることもできないなど完全復旧する見通しは立っていない状況です。
では、これらの状況を踏まえながら、日本は今後どうするべきなのでしょうか。
震災以降に増えた原発反対の声ですが、「危険だから」という理由以外の声は聞こえてきません。
しかし、現在の日本の現状を考えると、今すぐに原子力発電を完全に止めることは不可能と言えます。
その理由は代替策がないことで、火力発電はコストはますます上がるうえに大気汚染を加速することになり、水力・風力発電ではエネルギー大国日本の需要を賄えません。
まとめ
大切なことは、日本だけの問題とはせずに、世界規模で次世代エネルギーと原子力発電所の安全性の確保について検討することです。
電気を使わずに生活できない私たちですから、将来のことも含めて考えなければならない時期に差し掛かっていることを意識することが重要ではないでしょうか。